FA「FutureFit」徹底解説:イングランドの7歳全員が3v3を戦うことになった理由
2026/27シーズンから、FAはU7の入門フォーマットを3v3に義務化する。審判なし、ゴールキーパーなし、スコアも記録しない。2012年以来最大のユース改革FutureFitについて、何が変わるのか、400試合の実証データ、そして統括団体が改革を実際に浸透させる方法を解説する。
2026年秋、イングランドのある土曜日の朝を想像してほしい。
幅10メートル、長さ15メートルの小さなピッチ。両サイドに7歳の子どもが3人ずつ。審判はいない。ゴールキーパーもいない。ベンチもない。
キックオフはどちらから?子ども同士がじゃんけんで決める。
1試合は8分。終わると選手は隣のピッチへ移り、新しい相手と戦う。回転木馬のように試合が回っていく。タッチラインに大人が1人立っているが、笛は吹かない。正式な肩書きは「ピッチ・ファシリテーター」だ。
スコアはつけない。結果も記録しない。

これは理想主義のコーチによる私的な実験ではない。2026/27シーズンから、FAの決定によりイングランド全土で義務化される制度である。
プログラムの名前はFutureFit。報道の多くは「何が変わるか」に集中しているが、より興味深いのは、統括団体がこの規模の変更をどうやって現場まで押し切るのか、そしてその過程で何を守ると決めたのかだ。これはイングランドDNA徹底解説で書いた物語の続編でもある。2012年のフォーマット改革が育てた世代は、いまプレミアリーグの更衣室にいる。FutureFitは同じ道の第二歩だ。
何が変わるのか
2026/27シーズンから、3つのことが変わる。
U7の入門フォーマットが3v3になる。 これまで最年少の子どもは5v5から始めていた。これからは、最初の試合が3対3になる。
すべてのフォーマットが1年後ろ倒しになる。 U8からU9は5v5、U10からU11は7v7、U12からU13は9v9。11人制はU13からU14に移る。子どもたちはフルピッチに立つ前に、小さなフォーマットでもう1年過ごす。

ルールは年齢とともに増えていく。 最年少の年代ではスローインが廃止され、足でボールを入れる方式に変わる。リスタートはボールが転がっている時間を増やす方向に再設計された。複雑なルールは中学に上がってから、少しずつ加わる。
見落とされがちな重要な点をひとつ。これはクラブの大会規定ではない。FAは、学校、草の根、アカデミーのすべてに適用されると明言している。体育の授業も、学校対抗戦も、日曜リーグも、同じフォーマットで動く。
3v3の4原則
FAは3v3のために独立したガイダンス文書を発行した。冒頭に4つの原則が掲げられており、そのすべてが子どもではなく大人に向けられている。
交代なし。 「なるべく全員に出番を」という呼びかけではない。ベンチという概念そのものを廃止した。すべての子どもが可能な限り長くプレーする。5v5で12人の登録があれば、何人かはベンチで凍え、親は1時間立って10分の出場を見守る。複数ピッチが同時に回る3v3では、それは構造的に起こりえない。
すべての子どもがチームの一員としてプレーを学ぶ。 6人全員がフィールドプレーヤー。ゴールラインに1シーズン固定される子どもはいない。
結果よりも全人的な発達。 試合には競争があるが、結果は焦点ではない。スコアも順位表も記録しない。
年齢に適した試合設計で、技術的関与を最大化する。

そして最も重要な部分。3v3に審判はいない。選手が自分たちで試合を運営するからだ。タッチラインの大人は「ピッチ・ファシリテーター」と呼ばれ、FAはその役割を「審判をすることではなく、主に問いかけによって、選手が自分たちの試合を運営するのを支えること」と明記している。
4つを並べてみると気づく。FAが変えたのはルールだけではない。大人の立ち位置を変えたのだ。
明日から運営できる具体的な仕様
- ピッチ:推奨10m x 15m、最大15m x 20m
- ゴール:推奨120cm x 75cm、最大150cm x 90cm
- ボール:3号球
- 試合時間:6分から10分
- 形式:カルーセル方式(1試合ごとに相手を替える)
- 1人あたりのプレー時間:推奨30分から40分、上限60分

このうち2つは特に注目に値する。
ゴールは非常に小さい。標準的な5v5ゴールの約3分の1の幅しかない。これは偶然ではない。キーパーを取り除いて大きなゴールを残せば、ロングシュートの撃ち合いになる。ゴールを小さくすれば、子どもは近づき、コンビネーションを使い、相手を抜かなければならない。ルールもそれを補強する。得点が認められるのは、相手陣内にいる選手のシュートだけだ。
プレー時間には下限だけでなく上限がある。7歳の子どもが1日にプレーするのは最大1時間。統括団体が野心的な大人たちに「そこまでにしなさい」と告げているのである。

彼らは宿題をやった
この物語で最も感心すべき部分はフォーマットではない。論証だ。
発表の前に、FAは3つのことをやった。
国際ベンチマーク。 欧州40カ国以上のユースサッカー構造を調査した。判明したことのひとつ:調査対象国の半数以上が、U7で既に5v5より小さいフォーマットを使っていた。イングランドは先頭ではなく、後れを取っていた。
実証研究。 リバプール・ジョン・ムーアズ大学のFootball Exchangeと提携し、Allistair McRobert教授、Jon Foulkes博士、Ed Hope博士の研究チームが、全国のU6からU14の草の根の試合400試合以上からデータを収集した。測定したのは、ボール保持時間、意思決定の頻度、そして各フォーマットが技術面と身体面にもたらす実際のリターンだ。
2年間の協議。 草の根サッカー界と2年間協議と検証を重ねてから、最終決定した。
40カ国と比較し、400の実試合を計測し、2年間議論する。結論への賛否はどうあれ、フォーマットの決定はこうやってなされるべきだ。
付け加えると、3v3はこの改革のために発明されたものではない。イングランドの男女エリート育成パスウェイでは既に使われていた。トップで検証済みのフォーマットを、すべての子どもに開放したのがこの改革だ。
スコアをつけないことは、競争しないことではない
最も誤読されやすい点なので、正確に書いておく。
「スコアなし、順位表なし」と聞くと、FAが軟化した、参加賞サッカーだ、と結論づける人が多い。
FA自身の言葉を読めば、その解釈は崩れる。FutureFitは2つのテーマの上に立っている。第一が「子どもの権利の擁護」。第二が「試合の精神の promotion」であり、FAはその精神を「2つのチームが互いに敬意を持って競い合い、相手の得点を防ぎながら自らの得点を目指すこと」と定義している。
そこには競争を薄める言葉はひとつもない。3v3のガイダンスも明快だ。試合には競争性がある。ただ、結果が焦点ではないだけだ。
違いはここにある。子どもはどのみち勝とうとする。その本能は順位表がなくても消えない。しかしスコアが記録され、順位づけられ、コーチやクラブの評価に使われた瞬間、それは子どものものではなくなり、大人のものになる。
FAは前者を守り、後者を削除した。
権利であって、恩恵ではない
第一テーマの原文は精読に値する。FAは「すべての子どもには権利があり、プレーするすべての子どもに対してその権利を果たし続けることが、大人の責任である」と書いた。
「子どもにより良い体験を与えたい」ではない。その言い方では、良い体験は大人からの贈り物になる。FAの言い方では、それは子どもがもともと持っているものであり、大人は果たす義務を負う。
権力の配置がまるごと逆転している。そしてそれは細部に表れる。人数が3で割り切れず、相手クラブの選手と混成チームを組む必要があるとき、FAが付けた条件は「選手たちが同意すれば」だ。
彼らは子どもたちに「3v3は楽しいか」とも聞いた。FAのFAQによれば、U7の選手たちの答えは「楽しい」だった。
Sky Sportsがこの改革について書いた最も鋭い一行と符合する。抵抗は、子どもたちから来ているのではない。
学校でのFutureFit
FAは学校専用のセクションを用意した。そしてこれが、改革が機能するかどうかを決める部分だ。子どもがサッカーをする時間の大半は、クラブではなく学校にある。
新フォーマットは、体育の授業から学校対抗フェスティバルまで、学校のすべてのサッカー機会に適用される。4歳から6歳には「Play Phase(プレー段階)」という独立した名前の段階が用意されている。これは競技の前倒しではなく、この年齢の子どもはそもそも正式な試合に適さない、という明確な認定だ。3v3はキーステージ1で導入され、小学校の間はずっと3号球を使い、9v9はキーステージ3から、11人制は9年生(およそU14)以降となる。

改革を現場まで押し切る方法
どの国のどのスポーツであれ、何かを改革しようとする人に送りたいセクションだ。
土曜日の朝のピッチに届かない良いアイデアは、価値がゼロである。では統括団体は、ボランティア運営の数万チームに新フォーマットをどう浸透させるのか。
義務である。 奨励でも推奨でもない。2025/26シーズンは「アーリーアダプター」プログラムで20のリーグが先行導入したが、2026/27からは選択の余地がない。コーチの自発的な賛同に頼るアイデアは、もともと賛同しているコーチにしか届かない。
リーグが先、クラブが次、コーチは最後。 3つの公式カンファレンスはこの順で開かれる。2025年11月にリーグ、2026年3月にクラブ、2026年5月にコーチ。この順序が戦略のすべてだ。日程と登録と競技規則を握っているのはリーグである。リーグが変わらなければクラブは動けず、クラブが動かなければ、コーチ1人が練習場で変えても意味がない。逆順でやればどうなるか。コーチを説得し、感化された彼らがクラブに戻ると、リーグの日程は5v5のままだ。熱意は1カ月で冷める。改革運動の大半は、最も力のない層から始めることで、まさにこうして死ぬ。
カウンティFAが実行部隊。 FA自身は現場に降りない。3v3フェスティバル、対面CPDワークショップ、地域イベントを回すのは各カウンティFAだ。新フォーマットを着地させるために「カウンティ・コーチデベロッパー」という新しい職域まで作った。
資金で道を舗装する。 新しいゴールには実費がかかる。だからFootball Foundationが、条件を満たすリーグとクラブ向けに専用の「3v3ゴール支援パッケージ」を用意した。「条件を満たす」に注目。金はばらまくのではなく、行動を導くために使われている。
コーチ教育はフォーマットの後についてくる。 Introduction to Coaching FootballとUEFA Cの2つの資格課程が新フォーマットに合わせて更新され、3つの3v3新モジュールがカウンティレベルのCPDとして提供される。興味深いのは順序だ。すべてのコーチの準備が整うのを待つのではなく、先に試合を変え、それからコーチを再教育した。
そして保護者にまで手を伸ばした。 ほぼ全員が忘れる部分だ。FAは「Parents and Carers Gameplan(保護者向け行動指針)」を作り、クラブを通じて配布している。なぜ保護者なのか。タッチラインから「シュート!」と叫ぶのも、帰りの車で「今日は勝った?」と聞くのも保護者だからだ。記録用紙からスコアを消すことはできても、保護者の口からスコアを消すことはできない。コーチで止まる改革は、タッチラインで静かに撤回される。
正直な注記をひとつ。拒否したリーグに何が起きるのか、FAの公開資料には書かれていない。「義務」の歯がどれほど鋭いのかは、まだ分からない。
反対の声と、FAの回答
イングランドの草の根が全員喜んでいるわけではない。FAの誠実な点は、厳しい質問を自らのFAQに載せ、正面から答えていることだ。
「チームもコーチも事務作業も増える」 FAの答えはノー。6人から12人のマッチデー・スカッドで複数の試合を同時に回し、試合間でチームを組み替えられる。大人は2人で足りる。ただしDBS審査とセーフガーディング研修が必須で、人数は少なくてもハードルは低くない。
「ローテーションで、1人あたりのプレー時間はむしろ減る」 FAの答えはノー。交代がないからだ。1人30分から40分、上限60分。正直な算数をすれば、5v5時代のベンチの子どもは0分だった。
「ゴールキーパーの育成機会が失われる」 ここでFAは慰めを口にしない。3v3にキーパーはいない。6人全員がフィールドプレーヤーだ。これは誤解ではなく、本物のトレードオフである。同意しなくてもいいが、彼らは自分たちが何を手放すかを知っている。
「ゴールの費用は誰が出す」 Football Foundationのパッケージ。詳細は2026年3月に公表。
「うちのチームは小さいフォーマットに降格させられるのか」 どのチームも後戻りしない。一部の年齢グループは現行フォーマットに2シーズンではなく3シーズン留まる。道は伸びるだけで、逆走はしない。
あまり語られないおまけ。 U7では男女が同じ試合でプレーできる。FAの根拠は、この年齢で性別によってフォーマットを分ける必要はないという研究結果だ。
明記しておくべきこと。上記の批判は主にコミュニティブログとクラブのコメントから来ており、意見である。回答はFAから来ており、当事者の言い分である。FutureFitの効果に対する独立した評価はまだ存在せず、2026/27シーズンが終わるまで存在しえない。
ここから持ち帰るべきもの
3つ。どれもイングランド人である必要はない。
コーチを変えるより、試合を変えるほうが効く。 FAは分厚いコーチング教本を書かなかった。大会そのものを変えた。カリキュラムはコーチが自発的に学ぶ必要があるが、フォーマットは強制だ。そしてフォーマットが変われば、トレーニングは勝手についてくる。選手が土曜日にプレーする試合が、水曜日に指導できる内容の天井である。
「小さいピッチ、多くのタッチ」は、好みではなく実証済みの主張になった。 背後には400試合のデータがある。議論は終わらないが、議論の材料が変わった。
大人はもっと黙っていい。 ピッチ・ファシリテーターは、近年で最良のユースコーチの定義だ。裁かない。指示しない。問いかける。

イングランドが前回ユースフォーマットを作り直したのは2012年。あの小さなピッチで育った子どもたちは、いまプレミアリーグとイングランド代表の更衣室にいる。
今回、彼らは7歳にまで手を伸ばした。
ひとつの国が2年間協議し、400試合のデータを集めた。7歳の子どもがもう少し多くボールに触り、立って待つ時間を減らし、スコアを背負わずに済むように。3v3というフォーマットそのものより、そちらのほうが見るに値する。
彼らはルールに一行を書き込んだ。大人は舞台の中央から降りる。試合は子どもに返す。
出典
FAのFutureFit公式ハブ(englandfootball.com/futurefit)およびコンテンツハブ(Approach、Roadmap、Schools、FAQ各ページ)、FAの3v3ガイダンス文書、2025年2月21日のFA公式発表、リバプール・ジョン・ムーアズ大学の研究発表(2026年5月19日)、Sky Sportsの報道。本文中の草の根からの批判はコミュニティブログとクラブのコメントによるもので、検証済みの研究ではなく意見である。